小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー Vol.2


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2013年3月29日(金)に京都大学の小出助教にインタビューしました。
ホワイトフードにたくさん寄せられた子どもの未来を心配するママ・パパからのいくつかのご質問を取り上げ、お答え頂きました。

京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんです。よろしくお願いします。 今日はホワイトフードのお客様である妊婦さんと子どものいらっしゃるご家庭からいただきました質問についてご回答頂きます。

Q:福島原発事故の被害想定

チェルノブイリ事故による死者数と、日本での想定される被害は?
(小出先生の回答)
チェルノブイリの被害というのは、未だに分かっていないと思っています。 事故直後に大量に被曝して亡くなったのは31人と言われておりますが、旧ソ連政府の公式な発表ですが、実際にはもっと多くの方が亡くなっていると思いますし、その周辺でこれからガンで亡くなっていく方というのは、IAEAという国際的な団体が4000人ぐらいでおさまるという推定を出したのだが、それはごくごく一部の汚染地域にとどまっている人たちだけに基づいた計算でして、チェルノブイリ原子力発電所から吹き出してきた放射性物質を地球被曝という言葉ができたように、地球全体に汚染を広げていて、そういう人たちのガンをこれから考えると多分何十万人という方がこれから亡くなると思います。

日本では、噴き出してきた放射能の量でいえばと、チェルノブイリ原子力発電所から放射能のたぶん何割か、あるいは等しいぐらいか、あるいは何割かというぐらいだと思います。日本にとって幸いだったことは、福島原子力発電所は太平洋に面して立っていて、吹き出してきた放射性物質は太平洋に向かって流れて行ったことが起こりました。そのため、東北地方を中心とする日本に降った放射性物質は、かなり少なくて済んだことになりました。チェルノブイリ発電所の事故と比べると、たぶん何分の1という被害で済むであろうと私は思います。

Q:牛乳の安全性について
現在1歳半の子供がおり、これまではフォローアップミルクを与えてきましたが、そろそろ普通の牛乳に切り替えようと思っています。牛乳については、原発事故の影響によりヨウ素やセシウムが含まれているのではないかと不安に思っています。子どもの成長を考えると、全く飲ませずに育てるのは不可能ですが、どうすれば良いでしょうか。

(小出先生の回答)
まずは、ヨウ素やセシウムがということでございますけども、ヨウ素という放射性物質は私達が一番注意しないといけないものは131番という番号のついたヨウ素なのです。それが半分になるのに、8日という日数になります。事故後2年になりますので、実質上はヨウ素はないと思って頂いて結構です。

問題はセシウムですが、日本全土、あるいは地球全土に汚染していますが、地球と日本が汚染したのは、福島第一原子力発電所が初めてではありません。

1950年代、1960年代に大量に行われた大気圏内核実験というもので、地球上全てが汚されていましたし、1986年に起こったチェルノブイリ発電所の事故でもやはりセシウムによって全地球が汚染されていたのです。福島の原発事故の前にも汚染されていないものは何一つないというそういう状態でした。その上に福島原発事故が加わった。もちろん汚染には濃淡があります。

北海道や沖縄という地域に降ったセシウムは、米国に降ったセシウムよりもむしろ少なかった。そういうような状態になっております。汚染からの被曝は実はゼロにできないわけで、どこまで私達が受け入れるかという判断になります。私は現在の北海道あるいは沖縄で採れる牛乳であれば仕方ないと思いますし、加工食品のミルクを飲ませるよりはむしろミルクを飲ませる方が良いと思います。

Q:魚は安全でしょうか?
情報を知っている人の多くは魚や海のものを食べないということを実行している人も多くいます。さらに、国は食品の検査対象を狭めると発表しております。本当のところ、日本で獲れた海の物を私たちは食べて健康を保てるのでしょうか。

(小出先生の回答)
健康を保てるかというご質問に関しては、放射性物質、被曝というものは全て有害ですので、少しでも取ればそれなりの危険を受けるということになってしまうので、健康は損なわれるというお答えするしかないと思います。 ただし、日本というこの国は海に囲まれた国で、私達日本人は海産物食べながら生きてきた訳で、海産物を全て捨てるということは、私達はできないだろうと私は思います。

ただし、海の汚染は今現在もデータがきっちと集まっておりませんし、陸上の汚染は先程から出てきているセシウムを問題にしているのですが、海の汚染にはストロンチウムという放射性物質を注意しないといけません。残念ながら今のところはデータが出てきておりませんので、海産物に対する注意は必要であると私は思います。これから国あるいは東京電力にデータを開示するように働きかけると同時に、できる限り自衛するということしかできないと思います。

Q:どれくらいで体から放射能を排出できるのか? やむをえず汚染物質を取り込んでしまうことも多々あると思います。この場合、体に取り込まれた放射能はいずれ排出されるのでしょうか。

(小出先生の回答)
もちろん排出されます。人間という生き物も環境で生きているわけで、環境からモノを摂取して、それを排出していくという流れの中で生きていますので、仮にセシウムを摂取しても、人間の排出機構で出していくといことにあります。たとえば、セシウムは137番が一番問題なのですが、半分になるに30年かかります。それを体に取り込んだら、ずっと体の中に30年経たないと半分にならないかというとそうではなくて、人間の体がセシウムそのものを排出していきますので、70日あるいは100日かもしれないですが、半分になってくれるそういう性質を持っています。

Q:プルトニウムについて本当に体に悪影響を及ぼすのは、国が調査対象としているセシウムやヨウ素ではなく、検査対象外のプルトニウムであって、どれだけ食べ物に影響しているか調べようがないから国の発表記録だけでは大丈夫とは言えないと聞いたのですが、どう考えれば良いのでしょうか?

(小出先生の回答)
福島第一原発から放出された放射性物質は、一部は大気中に放出され、一部は海に放出されています。大気中に放出された放射能だけを問題にするのであれば、私はセシウムに気をつけることが一番だと思います。というのは、大気中に放出されたセシウムと比べるとストロンチウム恐らく1000分の1以下ですし、プルトニウムに立っては100万分の1です。たしかにプルトニウムは猛毒ですが、放出された量は圧倒的に小さいので、やはり注意すべきはセシウムだと思います。

ただし、海に放出されたもの、あるいは放出されているモノに関しては、セシウムだけに気をつけているだけでは、私はダメだと思います。ストロンチウムという放射性物質は大気中には余り出て来なかったですが、海に向かってはセシウムと同じぐらい出ているだろうと私は思います。

そして、ストロンチウムという放射性物質はセシウムと比べると数倍毒性が強いので、海産物から受ける被曝については、むしろストロンチウムの方が重要ではないかと思います。ですからこれから海産物に関してはストロンチウムに関しては気をつける必要がありますし、国や東京電力が十分に調査し、その情報を公開して欲しいと思います。

ただ、プルトニウムに関しては、海に出ている量も圧倒的に少ないと思いますので、皆さんがプルトニウム、プルトニウムと言って、プルトニウムの心配をしてくださることに関しては、間違いではないのですが、そうするのであればセシウムおよびストロンチウムに向けて頂いた方が良いと思います。

Q:外部被曝
私は北関東在住で、6ヶ月の乳児を育てています。この土地では事故後の空間放射線量が事故前の3倍ほどであることを知りました。(大体0.9マイクロシーベルト前後です)

(小出先生の回答) これは大変むずかしいご質問でございますけども、まずは数字を幾つか聞いていただいます。私はこの電話を大阪府の熊取町にある京都大学原子炉実験所の研究室で受けております。一時間あたり0.05マイクロシーベルトです。この原子炉実験所の中には放射性物質を取り扱っている特殊な場所がありますが、放射線管理区域と呼ばれておりますが、一時間あたり0.6マイクロシーベルトを超える放射線量の場所は、必ず放射線管理区域にしないといけないという日本の法律です。

今聞かせていただきました数値は、0.9マイクロシーベルトと思いますが、放射線管理区域にしないといけない地域かと思います。放射線管理区域というのは、私のような放射能を取り扱うごくごく限られた人に関して立ち入ることが許される場所ですし、私のような人でも立ち入った瞬間に水も飲めなくなる、食べ物も食べることも許されない特殊な場所です。そんな場所に私は人々に住んで欲しくなりません。日本という国が法治国家というのであれば、国家が人々をその場所から逃さないといけないと思います。ただ、残念ながら日本はそんな力はない、仕方がないから汚染地帯に住めと人々をその地域に捨ててしまっている訳です。

そうなると、普通の方は逃げることはできないと思いますし、今現在も汚染地帯で住むしかないし、子ども達もそこで生きるしかないという現状になっているのです。もちろん私はそのようなことを願いはしないのですが、現実はそうなっているわけです。

そして、そういう中で子どもというものを、ずっと子どもを家の中に閉じ込めておくことも私は考えてしまいます。やはり子どもは外で走り回ってどろんこになって走り回って草に触れるというのが子どもだと思いますし、そのようなことが何の心配なくできる環境がもちろん大切ですが、今現在それが許されない時に、子どもをどのように育てるべきかという問題は私にとっても難しい問題ですし、皆さんお一人お一人で判断して頂くしかないと思います。

答えにならなくて申し訳ないですが、許してください。

(ホワイトフード)
はい、ありがとう御座います。今日のご質問は以上でございますがこのように子育てをしながら、特に妊婦さんもそうなのですが不安に思いながら生活されていらっしゃる方から本当に沢山のご質問を頂きました。その中から一部だけご紹介させて頂きました。今後とも定期的にご質問にお応えいただく機会をいただけると嬉しく思います。

(小出先生)
はい、私が答えられることであれば答えますし、今日の最後の質問のように私自身も答えをだせず頭を抱えているという状態ですので、お答えできないこともありますが、お許しいただけると幸いです。

(ホワイトフード)
ありがとうございます。大変お忙しいところお時間をいただきましてありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

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