小出裕章氏(元京都大学原子炉実験所助教)インタビュー Vol.4


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2013年7月11日(木)に元京都大学の小出助教にインタビューしました。
こどもみらい測定所とホワイトフードのお客様から寄せられたママ・パパからのいくつかのご質問を取り上げ、お答え頂きました。

Q:吉田元所長の死について
震災当時福島原子力発電所の所長であった吉田さんが亡くなりました。死因は「食道がん」によるもので、震災後に浴びた放射線量総計は「70ミリシーベルト」と報道されました。東電によると、吉田元所長が食道がんで逝去されたことと、被ばくの関係については「あるとは言えない」、と発表されました。小出先生はこの東電の発表につき、どのように感じられましたか?

(小出先生の回答)
はい、厳密に科学的に言うならば、分からないとお答えするしかありません。
ガンというのは、皆さんご承知だと思いますが、被曝によっても起こりますし、被曝をしなくても様々な要因によってガンになるのです。

例えば私が京都大学原子炉実験所で働いておりますけども、私がガンになったところで、それが京都大学で放射能関連の仕事をしたためだと、実は証明できない。私の家系はガンの家系でして、私の親父もおふくろもガンで、親父は既になくなりましたし、おふくろもガンです。親族1等もガンです。多分私もガンで死ぬのですが、ガンが家系的な影響なのか、職場の影響なのかは決して証明できないのです。

吉田さんの被曝量も多いなと私も思いますし、公表された値ですね。70ミリシーベルとは多いと思いますし、実はもっと被曝していたかもしれないそういう疑いもあります。吉田さんのガンが被曝によって引き起こされた疑いを私はかなりもっていますが、ただ本当にそうだと断定することができません。

でも逆に言うなら、東京電力にしてもそれができないはずです。東京電力は食道がんは5年経たないと出てこないと言っていますが、それは元々正しくありません。そういうデータは広島・長崎の疫学調査に多くをよっているのですが、その疫学調査が始まったのが被曝後5年後からだったのであって、もっと早くからひょっとしたら出ていたかもしれないということなのです。チェルノブイリの原子力発電所の時もそうでした。原子力を推進してきた人たちは、被曝の影響は5年10年経たないと出てこないと言っていたわけですけども、チェルノブイリ事故の場合は事故直後から子供たちの甲状腺ガンの症状が現れてきてしまいました。

これまでの科学的な知見で証明できないとしても、それが事実がないということとは違いますので、東京電力が言っていること自体はまずは根拠がありません。

Q:内部被ばくが、妊娠のとき胎児にどれくらい影響を与えるのか、知りたいです。(女、30才、子ども無し、東京在住)

(小出先生の回答)
内部被曝というのは、とても嫌なんですよね。避ける事ができないというか、逃げることができないのですね。外部被曝とは汚染地帯にいる限りもちろん避けることはできませんけども、汚染地帯から出るとさけることができるのですが、内部被曝は放射性物質を体に取り込んでしまって起こる被曝ですので、どこ逃げても放射性物質と一緒に逃げるしかなくなって、逃げられないという意味で嫌な被曝です。

そして人間の体というのは、生物の体というものは複雑ですので、仮に1ベクレルという放射性物質を取り込んでも、どこにどれぐらい存在しているということも中々分からない。個性によっても違うということですので、内部被曝の量を評価するというのはとても難しいことです。

ただし、もしそれが正確に評価できるとすると、外部被曝も内部被曝も同じだと私は思います。そして一言でいうならば、1ミリシーベル被曝すると、ごく平均的に言って2500人に1人がやがてガンで死ぬ。ゼロ歳の子供は4倍~5倍、たぶん600人に1人ぐらいが1ミリシーベルトの被曝でガンで死ぬことを運命づけられる。内部被曝の場合も、もし正確に調べることができるとすると、今難しいと聞いて頂いた訳ですが、内部被曝によって1ミリシーベルトの被曝をしたとすると、大人であると何千人に一人がやがてガンで死ぬという危険をおうわけですし、ゼロ歳児であれば600人に1人、もし胎児であればそれよりも危険が大きいのではないかなと私は思っていますが、いずれにせよ数百人に1人が被曝によってガンを運命づけられるということだと思います。

Q:海産物の汚染状況をもっと知りたい。どんな頻度で検査しているの?(女、39才、子ども無し、神奈川県在住)

(小出先生の回答)
私もそれが心配なのですが、データが少ない、残念ながら少ないです。
海産物というのはとても扱いにくくて、たとえば陸上は事故の後に放射性物質が降ってきて汚染されているのですね。福島県の東半分を中心にして東北地方、関東地方のかなり広大なところが汚染されていて、そこから取れる農作物、酪農物、畜産製品などが、濃度高く汚れている訳です。

ただ海というのは常に流れてしまっていて、海流であちこちに運ばれてしまっているわけです。東日本大震災の瓦礫なども既に米国までに達しているわけで福島原子力発電所からは今も毎日流れているわけですが、それも海流にのって流れてしまっているわけです。

そして魚自身もある土地の農作物のように、そこでじっとしているわけではなくて、たいていのもの海泳いで移動しているわけで、どの魚がどれだけ汚れているということを突き止めることがまずは難しいことですし、漁業の生産物の場合は水揚げされた港が生産地になってします。福島沖の魚をとったとしても北海道で水揚げすると北海道産になるわけです。そういったものをどうやってきっちりと測定できるかということを私は心配しております。

その上、陸上の場合は、セシウムだけに注力しているといいと私はずっと言い続けていて、皆さんはストロンチウムやプルトニウムという放射性物質はどうなんだとしきりに質問をしてくださるわけですが、陸上に関する限りそんなものは放っておけと私は言ってきた。ひたすらセシウムに注意をしてくださいと言ってきたわけです。

海産物に関してはそれではダメです。恐らくセシウムと同程度にストロンチウムで汚れているでしょうし、ストロンチウムはセシウムよりも動物的に毒性が高いので本当はストロンチウムに注意をしないといけない。ただ、ストロンチウムの測定は大変面倒です。1つの試料を測定するために、何日も1週間もかかってしまうというほど面倒な放射性物質ですので、中々データがでてこないという状態になっております。皆さんに私から皆さんにこんなことをいうのは申し訳ないけど、残念ながらデータは不十分ですし、皆さんとしては中々注意のしようも難しいだろうと思います。

Q:除染した放射能の処理について、今後どうなっていくのでしょうか?(女、36才、東京都在住)

(小出先生の回答)
処理ということばをご質問の方が使われましたが、放射性物質というのは人間が煮ても焼いても消すことができない、基本的には処理ができないのです。
何ができるかという、人々の住んでいる場所からどこかに移動させているということなのですね。

除染というのは汚れを取り除いているのではなく、汚れをただただ移動させているということに過ぎません。今日本の政府はそれぞれの県でどこか一箇所に汚染物を集める、それが処理であると言っているわけですが、集めることでなくなるわけではありませんし、それをこれからずっとおもりをしないといけないわけです。

今中間貯蔵ということばがありますが、中間である道理がないわけです。
今押し付けられてしまうと、それは永久に留まるということになると思いますし、それを永い年月にわたって、漏れでないようにおもりをすることが私達にできる唯一のことなのです。

私自身は汚染物を引き受けることはやってはいけないと思っています。元々汚染した物は東京電力の福島原子力発電所の原子炉の中にあったものですので、所有者に返す。元々東京電力の列記とした所有物ですので、集めたモノは東京電力に返すというのが正しいと思います。

それらの放射性物質は元々入っていた福島第一原子力発電所に返すことが良いと思いますが、今はそれができません。なぜなら福島第一原子力発電所では膨大な放射性物質を前に作業員が毎日被曝をしながら苦闘しているわけで、それをさらに放射性物質を返すということはできないと思います。

私としては、福島第一原子力発電所の南10kmのところに福島第二原子力発電所という広大な敷地をもった発電所があります。東京電力はその原子力発電所をまた再稼働させるということを言っているわけですが、とんでもないことだと私は思います。これだけ福島周辺の人に苦難をしいておきながら自分の発電所だけは無傷で残すことなど許すことはできませんし、私は福島第二原子力発電所を放射能のゴミ捨て場にするということが良いと思います。かなりの部分はそこで抑えこむことができると思いますし、もし福島第二原子力発電所で足りないというのであれば、東京電力はもう一箇所柏崎刈羽原子力発電所という膨大な敷地を持っておりますので、放射性物質のゴミ捨て場にする。処理はできませんが集中的に管理をするというのが良いと思います。

Q:全国都道府県において、放射能汚染についての、それぞれの対応について知りたいです。(女、26才、子ども無し、静岡在住)

(小出先生の回答)
細かいことを言えば、それぞれの自治体で緻密に調べているところもありますし、もう調べなくてもいいと言っている次自体もあるわけです。

でも基本的にいうと放射能問題はともてやっかいな問題なので、それぞれの自治体は国がこう言っているから、もうイイと言っているというのが基本的な姿勢なのです。例えば、食べ物は1kgあたり100ベクレルという基準を国が決めているわけです。私はそんなものは当然安心ではないし、安全でもないし大丈夫でもないと言い続けておりますし、もっときっちり調べなければならないと言っています。

元々事故が起こる前の日本のお米は0.1ベクレル/kgしか汚れていなかったわけですから、1kgあがり100ベクレルの汚染は事故前の1000倍なので、そんなものが安心だとは当然言えないし、せめて子供たちに汚染が少ないものを回したいとおもいますし、きっちと測定し、学校給食であれば汚染物質が少ないものをまわさないといけないということをやらないといけないと主張し続けておりますが、中々それに応えてくれる自治体はありません。国が1kgあたり100ベクレルという基準をきめたから、それでいいんだといいうのが殆どの自治体だと思います。

(ホワイトフード)
「ありがとうございます。今回のご質問は以上になります。インタビューにお答えいただきましてありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。」

(小出さん)
こちらこそよろしく。

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