ストロンチウム90の小出裕章元助教の見解(陸編)


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(質問)アメリカ政府のストロンチウムとプルトニウムのデータがありますが、福島第一原発事故の影響なのか、あるいは大気内核実験の影響でしょうか?どのようなご見解をお持ちでしょうか?

 

ストロンチム90という放射性物質は、人体にとってたいへん毒性が高い放射性物質です。
プルトニウムはさらに毒性が高い放射性物質です。

 

人類がこれまで一番被ばくを受けたという原因は、福島原子力発電所の事故でもない、チェルノブイリ原子力発電所の事故でもない1950年代〜1960年代という長い時間にわたって行われた大気内核実験でばらまいた放射性物質から被ばくを最大にうけているわけです。

 

考えていただけるとわかると思いますが、大気内核実験というのは、空中で原爆・水爆を爆発させるわけですから、一切遮るものがないまま核分裂生成物が空中にばらまかれてしまうということになるわけです。ですからその放射性物質が、揮発性の高いものであろうが、揮発性がないものであろうが、水に溶けやすかろうが、溶けにくかろうが、とくにかく全部が出てきてしまうという汚染の仕方をするわけです。

 

そして、人類が大気内核実験でうけた汚染のうち最大の被ばく源がストロンチム90なのです。ですので、大変重要な放射性核種なのですが、福島原子力発電所の事故の場合には、希ガスは全量出た。ヨウ素も大量に出た。そしてセシウムもかなり大量に出たわけですけども、ストロンチム90という放射性物質は、揮発性が少ないがゆえに、大気中には出てこなかったのです。

 

セシウムに比べると、たぶん1000分の1ぐらいだっただろうと思います。プルトニウムという放射性物質はさらに揮発性が少ないので、ストロンチムに比べても、さらに1000分の1ぐらいしか出なかったと私は思っています。

 

ですから、先ほど聞いて頂いたように、セシウムに関しては東北地方・関東地方という膨大な地域が放射性管理区域にしなければならい程の汚染を受けてしまったわけですが、ストロンチムに関しては殆ど敷地の中、本当の近傍はたぶん大変だろうと思いますけども、広範囲の汚染ではなかっただろうと思いますし、ましてはプルトニウムに関しては、広範囲の汚染に関しては福島第一原子力発電所の事故では生じなかったと思っています。

 

ストロンチウムの汚染地図の詳細はこちら

Sr90改訂版_3

そして、ホワイトフードの森さんが丹念にDOEのデータをまとめて地図に示してくださったわけですけども、少なくてもプルトニウムに関しては、たぶん日本の数カ所で測定はしているわけですけども、それは大気内核実験による影響だろうと思います。

 

ストロンチムは殆どはというよりは、日本中、世界中全部に存在しているわけですし、今回DOEのデータを見ると、殆どは大気内核実験の残りというかその影響かと思います。

 

ただし、ホワイトフードさんが作ってくれた地図をみると、福島を中心にして、何か汚染が高い棒グラフになっているわけですが、高いように私には見えますし、それも言ってみれば当然のこと。ストロンチム90も事故によって吹き出してきているわけですから、福島近辺が大気内核実験の汚染の上に上乗せされてようになっているということだと思います。

(情報ソース:元京都大学 小出裕章助教の第10回インタビュー byホワイトフード